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「義務ナジウム」九州戯曲賞佳作作品 リーディング公演
2010.11.08 Monday 11:19
JUGEMテーマ:演劇・舞台
 

「義務ナジウム」 (九州戯曲賞 佳作受賞作品)
  
           
日時:2010年10月16日   場所:大野城まどかぴあ 小ホール

村山雅子(HN: 観世)



 今年2年目を迎えた九州戯曲賞。今回は大賞に該当する作品がなく、河野ミチユキ氏(熊本、劇団ゼロソー作・演出担当)の『義務ナジウム』が佳作を受賞した。

この賞の受賞作品の周知として、大野城まどかぴあではリーディング公演を開催している。賞を与えるだけでなく、その作品を広く紹介しようとする取り組みは評価に値する。しかし観客数がもう少し多いとよかった。この戯曲賞がもっと認知され、それとともにリーディング公演にももう少し客が入るようになっていくことを願う。

さて、受賞した河野氏は、所属する劇団ゼロソーで、空気感を大事にした繊細で情緒あふれる舞台を創り出すと定評があるそうだ。また近年は「コミュニティーの歪みに焦点を当てた作品」(リーディング公演上演パンフレットより)を創っているとのことで、今回の作品でもそのスタイルが強く感じられた。

九州の山奥にある美女都(みめと)町。女性の多いこの村には、昔から伝えられる村独自の風習があった。14才になると男女ともに、村の大人たちによって性的関係を体験させられるのだ。俗に言う「筆おろし」であるが、それがいわゆる元服、大人になる儀式ということで、秋の祭りの日に秘事として行なわれる。この作品は、その秋祭りを迎える数日間を描いた話だ。

現代という時代において、この村も外部から客が来たり嫁をもらったり、近隣町村との関わりを持たざるを得なくなったりしている。その中でこの風習・この考え方を守るべきかどうか。14才の子供たちだけではない。代々続く家に嫁いだ女は、夫の父や兄弟とも関係を持つ。子孫を残すためだという。「みんなこれを繰り返してきたんだもんね」そう思ってあきらめ受け入れている。

周囲から隔離されたような小さな集落には、独自の因習が残っていることがよくある。ずっとそうしてきたからと続いている、その「人には言えない、見せられないようなこと」が、社会的に明らかになりそうな時、その集落の人々は何を思いどうするのか。非常におもしろい着眼点であり興味をひかれるテーマだ。方言を多用し歴史や伝説を散りばめることで、九州の山奥がなんとなく想起される。

また構成も巧みである。なんとなく想像はつくが、確証が持てないこの村の秘密。親密すぎて複雑化している人間関係。それらがもどかしいほどゆっくり明らかになってくるので、後半までじりじりとした気分が続く。

ただ、見終えた後の印象としては、非常に狭い世界の話であり〈閉じた感じ〉がした。テーマはたしかに面白いが、普遍的なものとして投げかけるには、もう少し工夫が必要かもしれない。たとえば、昔からのしきたりとして村民はそれに従って生きてきたのだろうが、なぜそうしなければならなかったのか。そうまでして守ってきたものは何で、それはこれからも守らねばならないのか。しきたりを破る恐怖があるなら、その理由と描写が必要だろう。それを破ろうとして何かひどい目に遭った、等である。これがはっきりしないために風俗的興味の色が強くなり、その裏側にある「そうせざるを得なかった理由」が薄れてしまっている。「女ばかり」の村であることや、伝説の神木「乳銀杏」について等、肝心なキーワードについても漠然としか触れられておらず、詰めが甘いように思った。

 ところで、この作品で私が一番感動したのは「美しいト書き」であった。役者が演じる普通の公演では、ト書きに書かれていることは舞台から感じるだけのものであり、その文章に触れることはできない。リーディング公演はト書きも朗読してくれるので、この作品のト書きが実に美しい文章で綴られていることが聞き取れた。このような点からも、リーディング公演は戯曲作品の紹介に適していると言えるだろう。

このリーディング公演の演出は、グレコローマンスタイル主宰の山下晶氏が担当した。「可能な限り『おと』だけでこの作品の世界観を伝えたい」(パンフレットより)ということで、桃を食べるピチャピチャという音、ミミズクの鳴き声や羽音などを強調し、淫靡な印象や山奥の雰囲気をよく出していたと思う。また、舞台下手に設置された階段が、神社を出入りする人とその心情を表現するのにうまく活かされていた。

 

また来年以降もこの九州戯曲賞に、すぐれた九州色の濃い作品が多く応募され、次は「大賞」受賞作品のリーディング公演で、新鮮な感動に出会うことができることを期待している。

                                                      【終】

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