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様式に形取られた民話的世界
2010.07.15 Thursday 14:45
JUGEMテーマ:演劇・舞台
 

こふく劇場 「水をめぐる」
          日時: 2010年4月29日  18:00〜   場所:西鉄ホール 
                                                
村山雅子     


 照明に照らされた水面の揺れが、役者の肌に反射して映る。その美しいゆらめきが目に残り、耳には、すくい上げた手からしたたり落ちる水の音が、そしてあの床板を踏み鳴らして歩く音が残る。

宮崎で20年活動を続けている、こふく劇場の公演。中央に黒い板張りの舞台があり、その周囲をやはり板張りの通路が囲んでいるだけの、簡素な舞台。中央舞台の真ん中の3つの四角い透明な水槽には、水がたたえられている。下手の舞台脇には太鼓やトライアングル等簡単な打楽器が置かれ、上手には古いラジオのようなものがある。開演前にはそのラジオから、水琴窟のような音が流れていた。

ストーリーとしては4人の登場人物が代わるがわる現れ、それぞれの水との関係を語りながら関わっていくというもの。これは若返りの水であり自分は本当は88歳の老婆であるという、若い女(かみもと千春)。燃える水を探しに来たのだ、きっとこの水は待っていれば燃える水になると言い、そこに居座る男(濱砂崇浩)。この水で目を洗うと目が見えるようになる、と言う盲目の女(玉利美緒)。そして、一言も口をきかず、苦しそうに身悶えしながら水で身体を拭く謎の女(あべゆう)。

特筆すべきは、その様式的手法である。

役者の出入りは同じ形式で統一されている。まず、腰を曲げた体勢で下手から登場し、止まる。それは歌舞伎や能の花道奥で、金輪の音とともに上がる揚幕の効果に似て、「役者が出るぞ」という心構えを客に促す。そのまま腰を低く落とした体勢で、演奏される打楽器の音に合わせて足を踏み鳴らしながら、無表情に通路を一周。これも能の橋掛りを進んでくる登場のしかたと同じ手法であるといえよう。それぞれの役者の登場は、顔見世のように観客に印象づけられる。また、歩に合わせた打楽器の音は、歌舞伎の立ち回り時の拍子木も思い起こさせる。そして本舞台に上がると、必ず決まった音で腰を伸ばしてまっすぐ立ち、静かに「こんにちは」と言う。まるで能において、本舞台に着いた演者が正面を向き直って構えるかのようだ。

役者は出ハケのたびにこの動作を繰り返す。時折ことばを発しながらだったり、駆け去ったりもするが、極端に型をはずれることはない。このように日本の古典を参考とした形式の上での縛りを課し、その制約の中で表現することで、そこから生まれる緊張感と美を外枠にした。ひとつのメソッドとして面白い。

また、神であるらしいとされる謎の女のたたずまいや、声を出さないところ、そして水で身体を洗うしぐさは、古来の日本の神の存在――静かで、暮らしと共にあり、けれども畏れを抱かせる存在――を想起させる。宮崎といえば高千穂神楽などでも知られるが、簡素で和風な衣裳や、舞台全体の雰囲気は、神楽の影響と言えるだろう。

登場人物たちはといえば、自分の世界に生きている人ばかり。いろいろ訴えるが、自分個人の悩み事ばかりだ。88歳だと名乗る女性は、昔1人の男に愛されたことが忘れられず、愛して欲しいと言う。男は、ずっと昔妻が凌辱されて殺されたのは、あんたと間違われたせいだと謎の女に話す。どの話も、一人よがりであるうえに、現実か虚実かよくわからない話だ。そのため、重苦しい内容であるが民話や昔話を聞いているかのようである。

男の話を聞いたあと、水が燃え出し、謎の女はうめき声のような絞り出す声でしばらく発声している。クライマックス的シーンだとは思うが、女のうめき声がとてもリアルで長く続くため、見ていることに苦痛を覚えた。激しい演技であるのにあと一歩胸の奥まで迫って来なかったのは、声のあげ方が長すぎ、リアルすぎたためではないかと、惜しく思った。もっとも演出はあの息苦しさが作品上不可欠だと思ったのかもしれないが。

きわめて演劇的で、土着芸能的匂いがする作品だったと思う。セリフまわしも独特のイントネーションで、宮崎弁とも違うようだったが、民話的な印象を強める手助けをしていた。

照明が非常に美しかった(工藤真一、川田京子)。水と簡素な舞台とが、照明効果を一層引き立てていた。

【終】

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